########商業・法人登記業務に関する法令、実務(先例・質疑応答等)の備忘録としてのページを予定しています。

商号の一部に「ふぁーむ」という表記を使用した設立の登記の申請は受理されうるか

質問
商号の一部に「ふぁーむ」という表記を使用した設立の登記の申請は,一般の社会生活において,現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころを示した「現代仮名遣い(昭和61年7月1日内閣告示第1号)」の拗音に見当たらないが,日本語表記の一方法と考えられることから,受理することは差し支えないか。

回答要旨
受理して差し支えない。
なお,商号は,呼称することができるものでなければならないので,会社の種類を表す部分を除いた商号の先頭に「ぁ」(長音を小書きにしたもの)等を用いることは,できない。
また,目的等で表記されている場合には,固有名詞は別として,受理することができない。
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「会社法等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いに関するQ&A 」(平成23年6月30日追加)

期限付解散の決議に基づく登記の申請の可否

質問
解散日を数箇月後の日とするいわゆる期限付解散決議をした株式会社が当該決議に係る株主総会議事録を申請書に添付して解散の登記を申請した場合,当該解散の登記は,することができる旨の見解が掲載された書籍・雑誌(商業・法人登記300問(テイハン)310頁,月刊登記情報570号59頁)を根拠として,当該解散の登記が可能でしょうか?

回答要旨
期限付解散の決議に基づく登記の申請は受理できない

 会社法(平成18年法律第86号)においては,「定款で定めた存続期間の満了」によって株式会社が解散するものとされ(同法第471条第1号),
「株式会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは,その定め」が登記事項とされている(同法第911条第3項第4号)ことに鑑みますと,
このように解散日を将来の日としようとする場合には,存続期間の定めとして定款に定め,その登記がされることが会社法の趣旨に沿うものと考えられます(江頭憲治郎「株式会社法」(有斐閣,902頁,第3版)参照)。

一般に,期限付決議については,「株主総会の決議の効力の発生を条件または期限にかからしめることは、法律の規定、趣旨または条理に反しない限り、原則として許されると解すべきもの」(最判昭37・3・8民集16巻3号473頁)とされており,
株主総会が自由に期限付解散決議をすることができるとすると,
定款で存続期間を定めたことと何ら変わりはないにもかかわらず,その旨を登記しなくてもよいこととなり,
存続期間を登記事項とし,これを公示することにより,取引の安全を図ろうとした会社法の趣旨に反するものと考えられるからです。

 よって,解散日を数箇月後の日とする期限付解散決議をした株式会社が当該決議に係る株主総会議事録を申請書に添付してした解散の登記の申請は,受理することができないと考えられます

(なお,当該決議をもって,当該株式会社の存続期間の定めを設ける定款変更の決議がされたものと考えることは,可能と考えられますので,
当該株主総会議事録を申請書に添付してされた存続期間の定めに関する変更の登記の申請は,受理することができると考えられます
(「商業・法人登記実務の諸問題(2)2(13)」(民事月報平成21年9月号)参照)。)。

 ただし,会社法上,変更の登記及び解散の登記にいずれも2週間の猶予期間が設けられていること(同法第915条第1項,第926条)に鑑みれば,
当該株主総会決議日から解散日が2週間以内とされているものであれば,
取引の安全を図るという会社法の趣旨にも必ずしも反しないと考えられますので,
期限付解散決議に係る解散の登記を受理して差し支えないと考えられます(昭和34年10月29日民事甲第2371号民事局長電報回答参照)。

平成22年11月25日
法務省民事局商事課土手補佐官

合同会社の清算結了について

【合同会社の清算結了】
合同会社は会社法第641条に定める事由によって解散します。
解散(合併・破産を除く)後は、清算をしなければならず(§644)、清算が結了するまでは、清算の目的の範囲内において、なお清算合同会社として、存続するものとみなされます(§645)。

清算人は、現在の業務を結了させ、清算中に債権者への弁済、残余財産の分配等の清算事務を遂行することになります(§649)。

清算合同会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、清算に係る計算をして、社員の承認を得なければなりません(§667Ⅰ)。

清算人が計算して社員の承認を求める場合には、清算結了の財産目録及び貸借対照表を作成しなければなりません(§667)。

なお、社員が1か月以内の当該清算に係る計算について異議を述べなかったときには、清算人の職務の執行に不正な行為がない限り、社員は、当該計算の承認をしたものとみなされます(§667Ⅱ)。

清算人は、清算人の計算書を各社員が承認したときから、本店の所在地において2週間以内に登記しなければなりません(§929②、§932)。

**合同会社では、法定清算による必要がありますが、合名会社及び合資会社の法定清算手続きと比較して、次のような特則が設けられています。

・清算開始後遅滞なく、債権者に対して一定の期間(2か月以上)内に債権を申し出るべき旨の官報公告を行い、かつ、知れている債権者に格別に催告をすること(§660)。
・債権申出期間は、原則として、債務の弁済が禁止されること(§661)。
・債権申出期間内に申出をしない債権者は、清算から除斥され、分配されていない残余財産に対してしか弁済の請求ができなくなること(§665)。

【合同会社の清算結了の登記】

清算結了の登記申請書には、次の書面を添付します。
①清算に係る計算の承認があったことを証する書面(商登法§121)
清算合同会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、清算に係る計算をして、社員の承認を得なければなりません(§667Ⅰ)。
この承認を受けた書面(清算に係る計算の承認があったことを証する書面)を登記申請書に添付しなければなりません。

なお、清算に係る計算についての承認を求めるためには、清算結了の貸借対照表を作成しなければなりません。会社法は、この点につき特に規定していませんが、清算人が就任したときは、財産目録及び貸借対照表を作成し各社員にその内容を通知する義務があるから(§658Ⅰ)、清算結了の計算書には貸借対照表も添付すべきものとされているようです。

また、承認しない社員については、1か月以内に異議が述べられていない旨の代表清算人の証明書を添付すべきと解されます。

②委任状(商登法§18)
登記の申請を代理人によって行う場合には委任状を添付しなければなりません。委任状には会社を代表する清算人が、法務局に提出している印鑑を押印します。


原始定款の附則の削除について(12/07/03)

原始定款の設立関連事項は、設立時点における事実の記載ですから、これを削除する定款の変更はできないと解されています(相澤哲氏の日本公証人連合会における講演「会社登記実務から見た定款認証の諸問題」公証151号18頁)。〈12/07/02 No.4547・No.4551〉


一般財団法人の評議員の就任による変更の登記の申請書には、定款を添付する必要があるか(12/07/06)

Q一般財団法人の評議員の就任による変更の登記の申請書には、定款を添付しなければならないか


A一般財団法人の評議員の選任の方法は、定款の記載又は記録事項であるとされている(法人法第153条第1項第8号)ので、その選任に関する書面に当たるものとして、定款を添付しなければならない(法人法第320条第2項,登記規則第3条、商業登記規則第61条第1項)
瀨島由希子「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律等の施行に伴う法人登記実務Q&A」Q30
同「法人法の施行に伴う法人登記実務Q&A」登記情報565号p.38 Q22

この点について、法務省のHP「商業・法人登記申請申請書様式・記載例」
5-5 一般財団法人役員変更登記申請書には
定款1通
(注)定款の定めに基づく評議員会の決議により代表理事を選定した場合に添付が必要となります。

とあり、評議員の就任による変更登記の申請書には、定款の添付が不要ともとれる解説があるので、注意が必要。
http://www.moj.go.jp/content/000072638.pdf


就任を承諾したことを証する書面(12/07/13)

取締役等の就任による変更の登記の申請書には,「就任を承諾したことを証する書面」を添付しなければならないとされています(商登法54条1項)。

就任を証する書面としては,就任を承諾した者が自ら作成した「就任承諾書」が考えられますが,
就任承諾は必ずしも書面による必要はないので,
株主総会の席上で被選任者が就任を承諾した場合には,
当該株主総会議事録の記載をもって「就任を承諾したことを証する書面」とすることができる,
というのが商業登記の実務において定着した見解です(※1参照)。

ところで,一部の登記官(関西地区・中部地区の法務局に勤務する?)が,株主総会議事録の記載を「就任承諾書として援用するには『出席した役員』としての氏名の記載が必要である。」(総会終了後に就任する者は、出席役員に該当しません。)と主張し,就任承諾書の添付を求めて補正の対象にしたとか(そして,その根拠は※2らしい。)。

議事録の記載表現は,疑義や誤解を生じないよう注意を払う必要があるのは当然とて,これまで実務で認められていた表現を急に否定するような取り扱いもいかがなものか?

なお,就任承諾表現については,金子登志雄先生のHP(http://esg-hp.com/)《2012.07.06(金)【就任承諾表現】》が参考になります。

また,「取締役の就任承諾と株主総会議事録の記載の援用」の問題は,
内藤卓先生のブログ(http://blog.goo.ne.jp/tks-naito)が詳しい。

2012-07-12 http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/04c9cea5ad053e5a5d2953ea5d073842
2011-08-30 http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/c9500bbc016cfd7403e77f0d651ebfee  
2010-11-03 http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/ac159cd336ffaa6f25dadedd44c5f9c5

念のため,味村治 著 「新訂詳解商業登記法 上巻」697頁を確かめましたが,詳細な記述はありませんでした。

※1 『松井信憲「商業登記ハンドブック(第2版)」395頁』
株主総会の席上で被選任者が就任を承諾した場合には,登記申請書において「就任承諾書は,株主総会議事録の記載を援用する。」と記載すれば足りる。
この取扱いは,代表取締役以外の取締役の就任の登記において,その就任承諾の事実が,議事録作成者である取締役の記名しかない株主総会議事録に記載された場合も,同様である(株主総会議事録の真実性は,過料の制裁をもって担保されており,また,自らの記名押印のない書面を就任承諾書として援用することができるのは,旧商法において株主総会議事録をもって監査役の就任承諾書として援用する場合と同様だからである。)。
なお,被選任者が株主総会に出席せず,議長から被選任者の就任承諾について内諾を得ていた旨の報告があっただけでは,本人の意思表示が伝聞形式で議事録に記載されるにすぎないため,株主総会議事録をもって就任承諾を証する書面とすることはできない(堀恩恵「就任を承諾したことを証する書面としての株主総会議事録の記載」旬刊商事法務1225号48頁)

※2『月刊登記情報598号 2011.9 「登記官の目~就任承諾書の方程式」(85頁以下)』
株主総会議事録に出席取締役の記名押印は求めていないが,出席した取締役・監査役等の氏名を内容とする必要があり(会社法施行規則72条3項4号),就任承諾書として援用するには「出席した役員」としての氏名の記載が必要である。この記載は「出席した役員」として氏名を明記するのが望ましく,「被選任者が即時就任を承諾した」旨,「被選任者がその場で就任を承諾した」旨の出席したことが伺われる(窺われる?)記載では不十分と考える。


清算結了の登記の申請書に添付すべき決算報告の承認があったことを証する書面について(12/08/15)

〔要旨〕収入の額及び費用の額を明示せず,清算結了時の残余財産がない旨のみを示した貸借対照表のみを添付し,これに承認を与えた旨の記載のある株主総会議事録を添付してされた清算結了の登記の申請は,受理することができない。

【問】 商業登記法(昭和38年法律第125号)第75条は,「清算結了の登記の申請書には,会社法第507条第3項の規定による決算報告の承認があったことを証する書面を添付しなければならない。」としていますが,本条の趣旨は,株主総会における決算報告の承認をもって清算手続が適法に終了したことを確認することにあると考えられます。
 そして,清算株式会社が決算報告に掲げるべき内容については,会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第150条第1項に規定されています。そうすると,清算結了の登記の申請書に添付する株主総会議事録は,同条項が規定する事項全てを内容とする決算報告について承認を与えたことを内容とするものでなければならないと考えられます。
 したがって,収入の額及び費用の額を明示せず,清算結了時の残余財産がない旨のみを示した貸借対照表のみが添付され,これに承認を与えた旨の記載があるにすぎない株主総会議事録によっては,当該決算報告が適法・有効に承認されたかを確認することはできないことから,これを添付してされた清算結了の登記の申請は,受理することができないと考えますが,いかがでしょうか。
(なまはげ)
【答】 御意見のとおりと考えます。
登記研究第773号(平成24年7月号)質疑応答【7940】

※商業・法人登記申請 申請書の様式
http://www.moj.go.jp/content/000071009.pdf

※会社法施行規則
(決算報告)
第百五十条  法第五百七条第一項 の規定により作成すべき決算報告は、次に掲げる事項を
内容とするものでなければならない。この場合において、第一号及び第二号に掲げる事項
については、適切な項目に細分することができる。
 一  債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額
 二  債務の弁済、清算に係る費用の支払その他の行為による費用の額
 三  残余財産の額(支払税額がある場合には、その税額及び当該税額を控除した後の財産
  の額)
 四  一株当たりの分配額(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式一株当たりの分配額)
2  前項第四号に掲げる事項については、次に掲げる事項を注記しなければならない。
 一  残余財産の分配を完了した日
 二  残余財産の全部又は一部が金銭以外の財産である場合には、当該財産の種類及び価額


印鑑届書に添付する印鑑証明書は、原本還付が認められるか?(12/09/06)

印鑑登録証明書についての原本還付について
(平成11年2月22日法務省民3第347号依命通知)

(依命通知)標記の件については、昭和三四年一二月一 日付け民事甲第二七四二号民事局長事務代理回答、昭和四〇年七月七日付け民事甲第一七〇三号民事局長回答等 により取り扱われているところですが、この度、総務庁 行政監察局長から当局長あて本年一月二九日付け総監第一三号をもって、複写すると「無効」等の文字が写し出される用紙を使用した印鑑登録証明書についても原本還付を認めるよう、その取扱いを統一すべきである旨のあっせんがありました。 ついては、複写すると「無効」等の文字が写し出される用紙を使用した印鑑登録証明書についても、その謄本を添付して原本還付の請求があった場合には、印鑑の同一性を確認することができるものであるときは、,原本還付を認めて差し支えないことに取扱いを統一することとしたので、この旨貴局管下登記官に周知方お取り計らい願います。 なお、複写機の高性能化等に伴い、印鑑登録証明書の偽造事件等が跡を絶たない実情にかんがみ、印鑑登録証明書の原本還付については、登記申請の受付窓口で行う のではなく、例えば、調査担当者又は登記官において、 その同一性を十分確認した上で処理されるなど、特に慎重な事務処理体制を採られるよう特段の御配意を願います。
http://www.e-profession.net/pukiwiki/index.php?%B0%F5%B4%D5%C5%D0%CF%BF%BE%DA%CC%C0%BD%F1%A4%CB%A4%C4%A4%A4%A4%C6%A4%CE%B8%B6%CB%DC%B4%D4%C9%D5%A4%CB%A4%C4%A4%A4%A4%C6%A1%CA%CA%BF%C0%AE%A3%B1%A3%B1%C7%AF%A3%B2%B7%EE%A3%B2%A3%B2%C6%FC%CB%A1%CC%B3%BE%CA%CC%B1%A3%B3%C2%E8%A3%B3%A3%B4%A3%B7%B9%E6%B0%CD%CC%BF%C4%CC%C3%CE%A1%CB
登記先例・通達・回答 - e-profession
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:fgwFPtGYt0sJ:www.e-profession.net/pukiwiki/index.php%3F%25C5%25D0%25B5%25AD%25C0%25E8%25CE%25E3%25A1%25A6%25C4%25CC%25C3%25A3%25A1%25A6%25B2%25F3%25C5%25FA+&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&lr=lang_ja

【結論】原本還付請求を認めても差し支えない。

少し古くなった論点ですが、備忘のために。

商業登記の申請書に添付する印鑑証明書については、原本還付請求が認められています(商業登記規則第49条)。
一方、印鑑届書に添付する印鑑証明書(同規則第9条第5項)については、以前は「印鑑届書と一体となったものである」として、原本還付請求が認められていませんでした(昭和57年4月19日民四第2926号)。

商業登記ハンドブック(第2版)105頁
商業登記規則9条5項の規定により同条1項の書面(印鑑届書)に添付された印鑑証明書については、同規則49条の規定を類推適用し、原本の還付をして差し支えない(平11.2.24民四821号通達)。

その他
司法書士内藤卓のLEAGALBLOG
http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/62820da1b2d79302ec8d820f7865761a


清算結了会社の復活(12/12/15)

本年7月に受託した案件です。備忘のためにアップしておきます。

◎約10年前に社員総会の決議により解散、清算結了の登記がされている有限会社に、同社名義の不動産が存在していることが判明しました。不動産は(当時の)清算人に譲渡したいがどうしたらよいでしょうか?

■清算結了の登記(商業登記法第75条)がされた後に、当該会社に不動産があることが判明したときは、会社法第507条第1項に規定する「清算事務が終了した」ことにならないので、既になされている清算結了の登記を「錯誤」により抹消する必要がある(商登法§134Ⅰ②)。

■株式会社の清算結了の登記がされたときは、当該登記記録は閉鎖される(商登規§80)が、これを復活することになる。

■「清算が結了していないことを証する書面」を添付する(昭28.12.4民甲2321)。
株主総会議事録のほか不動産の登記事項証明書を添付した。

■清算人に関する登記を抹消する記号は記録されてない(朱抹されてない)が、新たに印鑑届をする必要がある。

■新たに判明した不動産については、清算人に代物弁済により所有権移転の登記を申請する。

■株主総会では、第1号議案で清算結了抹消の件、第2号議案で利益相反行為承認の件を決議した。

■清算結了登記を抹消後の登記事項証明書(関連部分)




6社合併登記が終了(12/12/15)

11月1日、どうにか6社合併の登記が終了しました。
詳細は後日アップします。
存続会社の合併後の登記事項証明書(関連部分)

http://www.satou-j.com/swfu/d/auto_SF62m7_gappei.pdf



取締役会設置会社の定めの廃止に伴う代表取締役の登記について(13/6/25)

月報司法書士 2013.6 No.496 p.86に掲載されている。

Q 取締役会設置会社(代表取締役甲、取締役乙、取締役丙)が、その取締役の任期中に、定款を変更して取締役会設置会社の定めを廃止し、代表取締役を定める方法を設けなかった場合、従前の代表取締役甲のみが代表権を持つのでしょうか?

A 甲、乙、丙の全員が代表権を持ちます。よって、代表取締役甲を除く、取締役乙及び丙については、「代表権付与」を原因とする代表取締役の変更の登記申請をする必要があります。

[解説]
(1) 取締役会設置会社が、定款を変更して取締役会設置会社の定めを廃止した場合、併せて、定款に代表取締役の選定方法をどのように定めるか、又は定めないかにより、代表権の帰趨に違いがでてきます。

本間の場合、その取締役の任期中に、取締役会設置会社の定めを廃止し、代表取締役を定める方法を定めなかったことで、会社法第349条第l項本文及び第2項により、従前に代表権を有しなかった他の取締役(乙、丙)は、法律上の当然の効果として、各自代表権を有することとなります。

そこで、取締役乙及び取締役丙はその任期中に、代表取締役としての選定行為や就任承諾なくして、代表取締役となりますので、登記実務上、「代表権付与」を原因(原因年月日は、当該定款の取締役会設置会社の定めの廃止の効力が発生した日です。)とする代表取締役の変更の登記を申請することとなります(平18.3.31民商第782号民事局長通達第2部第3,4 , (2 ) ,ウ, (ア))。

なお、代表取締役の選定行為や就任承諾がないので、登記申請書には、就任承諾書や印鑑証明書の添付は必要ありません。

(2)以下は割愛

特例民法法人が,通常の一般社団法人等へ移行すると同時に移行後に最初に就任した理事の任期は?(14/02/13)

理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。ただし、定款又は社員総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない(法人法第66条 )。

任期の起算点(始期)は,「就任時」(選任後,被選任者の就任承諾がされた時)からではなく,「選任時」(選任決議をした時)からである。
仮に,社員総会の決議で,条件または期限を付す等して選任決議の効力発生時期を遅らせることとしたとしても,原則として,任期の起算点は選任決議の日と解される(「一般社団・財団法人法の法人登記実務_江原健志編」p.58)

《え~っ?!》

なお,一般社団法人等を設立した場合の最初の理事(設立時理事)の任期の始期は,法人の成立の日(すなわち設立登記の日)が任期の始期となる。
新設合併により設立された一般社団法人等の最初の理事(法第254条第4号参照)の任期の始期も新設合併の効力発生日(すなわち設立登記の目。法第255条,第22条,第163条参照)である(同p.60)

《で,移行の場合は?》

また,特例民法法人が,通常の一般社団法人等文は公益法人認定法上の公益法人に移行すると同時に(移行の登記(整備法第106条第1項,第121条第1項参照)をすることを停止条件として)移行後に就任する最初の理事,監事,評議員又は会計監査人(以下「理事等」という。)を選任した場合(例えば移行と同時に評議員を設置することとし,定款の変更の案(同法第102条,第118条参照)に移行後に就任する最初の評議員(就任予定者)の氏名を記載する定款変更手続をした場合)には,当該理事等の任期の起算点(始期)は,一般社団法人等の設立の場合の理事等の任期の取扱いに準じて,選任行為時ではなく,移行の登記時となる(同p.60-61)。


会社法施行時現に存する公開小会社の監査役の取扱い(14/11/12)

監査役の退任登記が未了の会社があったので,備忘のために,
会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(H18・3・31民商782通達)
をアップします。

第8部経過措置

第1 株式会社に関する経過措置

1 整備法の施行の際現に存する株式会社(以下「旧株式会社」という。)の施行日以後の取扱い

(3) 特例法の規律に関する事項の取扱い
イ 監査役の監査の範囲の定め
整備法の施行の際現に小会社である会社の定款には,監査役の監査の範囲を
会計に関するものに限定する旨の定めがあるものとみなすとされた(整備法第
53条)。ただし,当該会社が公開会社である場合には,監査役の監査の範囲
を限定することができない(会社法第389条)ため,上記の定めがあるもの
とみなすことができず,施行日に,従来の監査役は,任期満了により退任する
こととなる(会社法第336条第4項第3号参照)。

2 旧株式会社の登記の施行日以後の取扱い

(7) 公開会社である小会社による監査役の退任の登記の申請
1の(3)のイにより公開会社である小会社の監査役が施行日に任期満了により
退任したときは,変更の登記をしなければならない(会社法第915条第1項)。
この場合においては,(6)のアの場合等と同様に,施行日から6か月以内(最初
に登記をすべき時が先であるときは,その時まで)に登記をしなければならない
ものとする。

(6) 委員会設置会社による登記の申請
ア登記すべき事項
整備法の施行の際現に委員会等設置会社である会社は,
施行日から6か月以内(最初に登記をすべき時が先である
ときは,その時まで)に,本店の所在地において,会計
監査人設置会社である旨及び会計監査人の氏名又は名称
の変更の登記をしなければならないとされた
(整備法第61条第3項第2号,第4項)。